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Posted: 25 Nov, 2016 @ 1:52am
Updated: 25 Nov, 2016 @ 2:22am

「それが運命石の扉(シュタインズ・ゲート)の選択か。」

疑似科学と言う言葉がある。理路整然としているが実際には存在しないデタラメな科学を指す言葉の1つである。
だが、疑似科学をテーマとした作品は現代に至る迄数多く発売されており1996年に発売された「この世の果てで恋を歌う少女YU-NO」は筒井康隆の小説「時をかける少女」をオマージュとした代表作品の1つと言えるであろう。
タイムリープ、タイムトラベルとは厳密には違う物のSFでの世界のお話であり現代に於いても実現していない。
だが、そのような行動が「もしも」実在したのならどのような行動を取るだろう。
過去の失敗を無かったことにすると言えば前述の「時をかける少女」の行動原理であり、使おうと思いたいと願う人間の大半が想像することだろう。
ただ、結果を変える事で歴史に矛盾が産み出されるとすればどうするか、歴史を変えてしまうことに責任は無いのだろうか?と--所謂タイムパラドックス理論とも言う、もしものお話ではあるのだが。

正に本作品は歴史の改変に於ける責任が1つの題材として存在している。偶然の産物によるタイムマシンの発明、興味本位からの実験で取り返しがつかなくなってしまった変化が襲う。
ただし、その変化は主人公以外誰も感知出来ない。他の誰も結果が変わった事に気付かないままその変化の中で生活していく事になるのだ。

本作品におけるシナリオは実に傑作と言える物だ。
と、言うのも過去にもこう言ったタイムトラベルがテーマとした作品は数多く存在しているが理論や、原理はあまり触れずただ存在してる事が前提として成り立つ作品が多い中、実際の出来事や実在の科学を混ぜ込む事で既成事実かの様な世界観をしっかりと作り上げているからだ。
(実際騙すテクニックとして嘘を混ぜると言うのは劇中でも示されている。)

また、科学やSFをテーマにした場合。文章がどうしても固くなったりしてとっつき辛い文章になったりするためどうしても敬遠しがちになるのだが、本作は発売当時のネットスラングや独特のキャラクター像でその欠点を大きく埋める事に成功している。
(ただ使われているネタは今となっては少々古いものもある。)

そして本作一番の魅力であり、作品を形作るのがキャラクター達の願った願いの目的とその本心である。その願いに迫ることで人物の魅力を掘り下げシナリオが彩られる。


主人公は痛い発言がメインで感情移入し辛い人物ではある。
ただし、去勢を張る発言ではなく、学生ではありながらも知識を用いて実際に行動出来る有能な人物でもあるのだ。
その本質は話の展開と共に彼が持つ確固たる思いと共に明かされていくがレビューでは触れない。

全ての登場人物を見た際、本作が抱える一番の欠点が存在している。
主人公の相棒であり、キーパーソンとも言える橋田至である。
彼は前述でも触れた「理論で成り立つ世界観」における異質な存在であるのだ。
彼はとんでもない能力を有している。ネタバレとなるため伏せてはおくが彼の能力の由縁や何故有しているかは一切の説明もなく、ただ存在してしまっているのだ。
散々他の要素で理論を成り立たせていただけにその点だけは本当に残念である。

シナリオの話は一旦置いておくとしてゲームシステムの話も少ししよう。
本作品は所謂、ビジュアルノベル(VN)と言われるものである。
VNは基本進行は選択肢で可変するものであり、プレイヤーが自身で選択を行う事で変化を生み出していくものである。
懐かしの携帯電話を用いたフォーントリガーと呼ばれるシステムを用いているのだが(英語版ではPhoneTorigger そのままの意味である。)本作品では選択肢を選択肢として感じさせない様に作られており、その世界観を損ねない。
この作りは煩わしさもあるものの、劇中で自由に、どの様な場面でも携帯電話を見ることが出来るため、正に大成功と言える仕様であろう。
蝶の羽ばたきが遠く離れた地で竜巻を起こす。所謂バタフライエフェクトと呼ばれるたとえ話の様に、その影響は必ず何処かで発動する。物語の真相に辿り着くには何度も何度もその影響を重ね合わせていかなくてはならない。

そして、この紹介を読んでもしあなたの心に触れる物があるのならば、この素晴らしいSF作品を読破してみるのはどうだろうか?
あなたの心や人生にも、必ず大きなバタフライエフェクトが起こることであろう。
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1 Comments
baiye 25 Nov, 2016 @ 3:06am 
非常に良いレビュー+rep