nebusoku の最近のレビュー

真夏日に飲む一杯のレモネードのような、小さな贅沢。

まるでソーセージ・ロールの衝撃をもう一度遊んでるみたい！

みんな待ってた傑作は、みんなが期待した以上の傑作だった！

このゲームの最大の偉業は、このすばらしい発想をパズル猛者のための特権的な娯楽にしなかったこと。よくできた手引きと抑制のきいた混乱でたくみにプレイヤーを誘導し、自力で理解して解くことの楽しさを教えてくれます。驚いたことに、論理思考力が弱くて普段から複雑なしくみに音を上げがちなぼくでも、ほとんどのレベルを理屈で考えて解くことができました。一貫してカジュアルとはいかないけれど、けして狭き門ではない。

不得手な人から熱心なファンまですべてのプレイヤーが心から満足できるゲームを作ることの難しさを思えば、この作品の隅々まで真摯な仕上がりはもはや奇跡です。小遣い稼ぎの冗長な暇つぶしや、ライト層の無邪気な見識につけこんだメッキの満足が幅を利かすことを嘆くなら、ぜひこのゲームを遊んでください。モンスターズ・エクスペディションやボンファイア・ピークスがそうであったように、パトリックス・パラボックスも真の挑戦を讃えながら、同時に横好きや臆病者の興味をけして置いてきぼりにはしません。

I like puzzle games. Because they are logical, creative and magical.
A little less elegant, but this is the puzzle!

※追記：そこそこバグがある。複数のしかけが絡みあう後半に遭遇しやすいです。クリアに支障はありませんが、バグを利用して解けてしまう問題もあるため、良心的に付き合う必要があります。

ソーセージ・ロールに続く倉庫番の大革新！

緻密なボクセルアートが美しい神秘的な廃墟をめぐり、無数のたき火に過去を焼べる。前作「Hiding Spot」から継承する身長の概念と名作「Sausage Roll」譲りのラジコン挙動を掛けあわせた、古典的かつトリッキーな倉庫番3D。倉庫番らしさを活かしつつ、同時にまったく新しくもある画期的な機構はさながらネオ倉庫番とでもいったところ。先達に倣う面はあるけれど、本作もまた新たなジャンルの嚆矢にふさわしい創意と完成度を具えています。

真っ向勝負で不可能を演出するまさしくパズルの中のパズル 馬鹿げたフェイクにがっかりさせられることもなければ、複雑が過ぎる手順にうんざりさせられることもなく、あるいは逆算のレールに乗った冗長な作業を強いられることもありません。すべてのパズルが単純な盲点の打開に重きを置いた簡潔な設計に終始し、最小限の配置で最大限の驚きを内包するよう精緻に練磨されています。一問いちもんが反復のない独創的なコンセプトを持ち、常に新鮮なひらめきのカタルシスをもたらしてくれます。

間口の広い難易度配分 単純な右肩上がりで難所の袋小路に追いつめるのではなく、アメムチのごとく緩急のある柔軟な難易度曲線を採用することで、やめどきを失う心地よいリズムを生んでいます。易門難問を進行に応じて交互に配置し、わき道にさらなる難問といったぐあいで、なかにはあえてパズル未満の余興的な趣向に振った問題もあったり。前進のためのノルマもゆるく、望むなら易しめのものだけ選んでカジュアルに完走することもできます。

意匠を凝らした美術と最高級のお手製パズル 正直なところ、30問を超えてもチュートリアルを抜けた気のしないなだらかな難易度上昇に最初は不安を覚えましたが、まったくの杞憂でした。（現在は別解がつぶされ、より適切な難易度曲線になっています）「Pipe Push Paradise」の Corey さんと「A Monster's Expedition」の Draknek が組んだ時点で傑作は約束されたようなもの！ 残念な点があるとすれば、ボクセルアートの壮観をより広い視野で望めたらと思ったことぐらい。パズルを愛する諸氏に広く強くおすすめします。

ちっぽけな一大感動スペクタクル

ケンカしたまま死別してしまった祖母と仲直りするため3日間のタイムスリップ…のはずがやって来たのは昭和だし祖父の恋敵まで現れて、はたしてトワは無事にバック・トゥ・ザ・フューチャーできるのか!?

お手頃価格で三度泣ける 初っ端ルート分岐で３つのまったく異なる物語が楽しめるうえ、サブクエストもルートごとに個別で用意されているこだわりよう。クエストの内容はおなじみのお使い形式ですが、テンポをくずさない絶妙なさじ加減で挿入されるため没入感を削ぐこともなく、単調な一本道を盛り上げるいい味付けになっています。クエスト外でも NPC たちのすべてのセリフにつながりがあり、町じゅうにちりばめられた小さな物語を紐解いてまわるのがとても楽しかったです。早急な展開や脚本の端々に覗く初々しさがくすぐったくもあるけれど、一周終えるころにはすべてご愛敬。声優さんの熱演はもちろん、一般公募に依った演出など、つくり手たちのつながりと愛情を感じる仕上がりが感動に花を添え、気づけばすっかり物語に引きこまれていました。涙腺に自身のない人はハンカチの用意を忘れずに！

プレイヤーに寄りそう心配り 進行に沿った簡潔で丁寧なチュートリアル、メニューからいつでもメインの目的を確認できる、ちくいちガイド役が配備されるおかげでサブクエストを見落とこともない、初回プレイ以降スタート画面から分岐直前に飛べるようになるなど、遊びやすさへの行き届いた配慮がうれしい。

おすすめするに当たっての懸念点（21/10/20 更新）

・キーボードでのプレイが厳しい
テンキー or IJKL でカメラ操作、Enter でインタラクト、とちょっと奇抜かつキーアサインも不可。コントローラー推奨。今後も PC 向けのゲームを製作される予定があるなら、カメラ操作はマウスに対応してほしいです。

・カメラ操作の難
デフォルトで上下反転していて（上を見るために下、下を見るために上を入力）変更も不可で正直ゲッと思った…のも束の間すぐ慣れました。

・各種設定がない、途中でゲームを終わるコマンドがない
デフォルトの設定で気持ちよく遊べました。 Alt + Enter でウィンドウとフルスクリーンの切り替え可。終了は Alt + F4 で。

・ロード画面が真っ黒
オープニング後のロードが長めなのもあってフリーズしたかと不安になりました。（外付けに入れていたことが原因だったようです）

・探索パートで会話が進まなくなることがある
発生すると強制終了するしかない。（1周目は一度も遭遇しなかったバグです。セリフを駆け足で送ると発生しやすい？）

・ワキが見え…
余談です。

コントローラーで遊ぶ前提なら、設定がいじれない、最初だけカメラ操作に戸惑う点を除けばゲームプレーは快適そのもの。その辺の評判が気になって購入を迷っているなら杞憂かと思います。

v1.02にて、キー配置の見直し、マウスによるカメラ操作の実装、カメラの上下動を一般的なもの（上を見るために上、下を見るために下を入力）に修正等、操作系の難が大幅に改善されました。まだ詰めの甘い部分もあり、多少の慣れは必要かもしれませんが、さじを投げるほどでもありません。少なくとも僕は快適に遊べました。
コントローラーなら唯一の懸念点だったカメラの上下動が修正されたのでストレスフリーに遊べます。

無名の佳作として埋もれてしまうにはもったいない！ 普段あまり遊ばない毛色の作品でしたが、とても丁寧なつくりでADVゲームとしてのクオリティは必要十分だと感じました。また、驚いたことに主題歌は作者本人による作曲、歌唱だそう。情熱にまかせてぎゅっと握ったおにぎりのような、けして高級な出来ではないけれど、ほおばれば心の芯から暖かくなるすてきな作品です。

ある意味 Baba Is You より好きです

ケモいオニイさんたちから授かる4つの魔法を頼みにサイケな演出と押し問答して緊縛趣味の鳥を解放し、集めた野菜で作った不思議なドーナツの力でエリアを解放してシュルレアルな世界をめぐる倉庫番系パズルADV。形容を許さぬ突飛なユーモアに二の足を踏みそうですが、パズルはいたってまじめ！粗削りながらおすすめにたる魅力があります。

門外漢ズ・ラック シンプルな倉庫番やひらめきに依ったものから試行錯誤系まで、4つのポテンシャルを掛けあわせたパズルは実にバリエーション豊かで終始興味の鮮度を保ってくれますが、奔放なアイデアにまかせた問題の質は玉石混交。たまに混じるすがすがしいほどパズル未満な問題が作者の半端な素養を物語ってさえいます。にもかかわらず満足の勝る仕上がりになっているのがこのゲームの驚くべきところ。プロ目線の方程式からは決して生まれえない魅力の宿る瞬間があり、それが作品に特別な価値をあたえています。たとえば足場を捏造する爆発や押せない倉庫番、スタックありきのスワップ、あるいは拾うまで使用可能数の見えないアイテムや美学無用のミスリードなど。奇抜で武骨で少々アンフェアな発想が、ときにすばらしい精度で噛みあって驚くほど上質なパズル体験をもたらしてくれることがあります。

日本語未対応 物語を楽しむためには英語の読解を求められますが、チンプンカンプンでもパズルは楽しめるし、そもそもまじめに読んでもやっぱりチンプンカンプンかもしれません。

巧妙で調子っぱずれな傑作 演出はプレイヤーを置いて不条理に満ち、肝心のパズルはムラがあるうえアンドゥもないしで人によってはハードルが高いかもしれないけれど、それを踏まえてもきっと「出会えてよかった！」が勝るはず。パズルゲームが大好きだけど、義務まがいの美学や洗練されつくしたやり口にも飽きてきたなと感じているなら（そしてケモくてセクシャルでトリッピーな話題に抵抗がなければ）、ぜひこのゲームを遊んでください。パズルの枠にとどまらない学びがあるかもしれないし、なくても十数時間は悩んだり笑ったり戸惑ったりできます。

発想のインパクトだけじゃない、すべてのパズル好きに遊んでほしい秀作！

無限にのびる身長とその反動を利用した副次的な移動手段を使って、サボテンでサボテンを運ぶとってもユニークな倉庫番。ままならない運搬過程、一筆書きの動線管理、変則的なグリッドの仕様といった斬新な制約の歯車が一部の隙もなくかみあった珠玉の良問題集。

Baba is you は遊びましたか？ Sousage roll は？ もちろん Snakebird も？ じゃあ、つぎはこれをやりましょう！

半分カジュアル、半分激ムズ 自力コンプのハードルは非常に高いですが、とてもていねいな難易度配分で、手軽に楽しみたい人でもすべてのエリアを回りやすいように配慮されています。

なんで解けないの !? いっけん複雑な機構から、状態数任せの乱暴な難度で責めてきそうな印象ですが、じっさいは正反対。厳しい制約とスマートな作問センスで打つ手を限ってなお盲点を演出する、とことん周到な良問ばかりです。易問難問問わず、シンプルな気づきのカタルシスに帰結する洗練された解法に思わずうっとり！

ことごとく意表をつくひねり とりわけ終盤のひねりがすばらしく、クライマックスにあってパズルを別次元に飛躍させます。まさしく斜め上をいく発想と極まった作問センスのタッグが課す新手の脳負荷に、たとえ上級者でもきっと新鮮な驚きと感動を味わえるはず。「たかがパズルゲーム」かもしれませんが、なるべくネタバレなしで遊んでほしいです。

ところで、どうして野生なのに鉢植えなんですか？

なつかしくて新しい！ 珠玉の PICO-8 製アドベンチャー

根菜に宿る不思議な力を使ってきつねのルースを巣まで導いてあげよう！ 発見の喜びと高い達成感に帰結する骨太な難易度。チュートリアルなし、添付のマニュアルで予習必須の本格派レトロスペクティブ・アドベンチャー。ファッションでない真のなつかしさと特異な作家性が結びついた古くて新しい世界は、まさしく PICO-8 の美学を体現したよう。まるで、オールドゲーマーたちの楽しむ力を育ててくれたテレビゲーム黎明期からのラブレターのような作品です。多くの人に届きますように。

プレイフローは概ね探索メインのメトロイドヴァニア。昏睡する住民を助けて道を尋ね、料理でステータス（体力や機動力）を上げたり、新たに手に入るコンサイリキを使うなどして活動範囲を広げていきます。終盤には手強い謎解きも待ちかまえています。


+ プレイヤーの発想力に委ねたユニークな環境パズルと手強い謎解き

+ PICO-8 の制約を疑う表情豊かなレトロワールド

+ こだわりぬかれた高い完成度

- 情報を確認できるタイミングが限定的（二度と確認できないような情報はない）

- PICO-8 の仕様に起因する操作系統のわずらわしさ

± ゲーム経験値を問う不親切さから広くおすすめしづらい


※日本語未対応となっていますが、マニュアルは日本語表記。ストーリーもほぼ言語異存なく進行するので英語力問わず楽しめます。


ところで、PICO-8 って何？

ここまでさんざん連呼しておいてなんですが、みなさんは PICO-8 をご存じでしょうか。あの異例の大ヒット作「セレステ」でも作中ゲームとして PICO-8 作品が登場するので、ゲーム制作に興味がなくても名前ぐらいは知っているという人もいるかもしれません。PICO-8 は単体でプログラミング、作画、作曲のすべてをサポートしたマルチゲーム制作ツールです。これだけ聞くと夢のようなツールに思われるかもしれませんが、加えて架空のレトロコンソールモチーフというコンセプトがあり、あえていくつかの厳しい制約が設けられています。PICO-8 について知れば、KONSAIRI のまた違った魅力が見えてくるかもしれません。

・使えるボタンは上下左右 ＋ 2ボタン （とメニューボタン）のみ。ファミコンのコントローラーをイメージしたような仕様になっており、操作コマンドの豊富なゲームでは割り当てに創意工夫を求められます。

・カラーパレットはたったの16色。細かな陰影表現や昼夜の色彩表現が魅せる KONSAIRI の世界に触れた人にはにわかに信じがたいことかもしれませんが、本当です。

・同時に鳴らせる音は4つまで。SE を使う場合、BGM は3和音に制限されることになりますが、ぼくは KONSAIRI の音楽に3和音以上の広がりを感じてなりません。

・プログラムに使えるキーワードは約8000トークンまで。じつはぼくも最近、プログラミング初心者ながら pico-8 でゲームを一つ完成させました。トークンのくわしい換算方法はわかりませんが、素人らしい簡素な小品であったにも関わらず制限ぎりぎりまで消費する結果になりました。KONSAIRI ほどの規模のゲームを完成させるのに並大抵の知識と努力では成しえないことを、ぼくは身をもって知っています。

（20/11/22追記：恥ずかしながら PICO-8 の仕様について知識不足だった点の補足コメントを開発者様からいただきました。ご興味ある方はそちらもご一読ください。）

わかるけどわからない

えっとつまり、箱の中の変化は箱の外に出るとリセットされるけど、箱の外の変化は箱の中の出入りに関わらず保持されるから、たとえばこの箱の中のものをこの箱の中のその箱の中に移したまま保持したいなら、この箱の中のその箱をこの箱の外に持ち出してこの箱をこの箱の外のその箱の中に持ち込んでその箱の中のこの箱の中のものをこの箱の外のその箱の中に持ち出せばよいと、こうおっしゃるわけですね。

はっはーん。

つまりどーゆーことですか？