その鳴き声で、ボクの冒険は始まった。不思議な世界に迷い込んだボクの前に現れたのは、ニワトリそっくりの姿をしたパルだった。大きな目で見上げてくるその姿に、ボクは思わず笑みがこぼれた。

 「君の名前は...コッコちゃんにしよう」

ボクはそう話しかけた。コッコちゃんは喜んだように羽ばたき、ボクの肩に飛び乗った。その瞬間、ボクとコッコちゃんの間に不思議な絆が生まれた気がした。

日々の冒険の中で、コッコちゃんはボクの心の支えとなっていった。危険な時は勇敢に立ち向かい、疲れた時は温かく寄り添ってくれる。その存在は、この見知らぬ世界でのボクの希望の光だった。

しかし、冒険が進むにつれ状況は変わっていった。より強力なパルたちと出会い、仲間に加わるようになったのだ。彼らは戦闘力も高く、特殊能力も持っていた。コッコちゃんの出番は徐々に減っていき、ボクの肩で休んでいることが多くなった。

ボクの心の中で、罪悪感と新しいパルたちへの期待が混在していた。コッコちゃんを見るたびに胸が痛んだが、強くなりたい気持ちも抑えられなかった。

そんなある日、予期せぬ大寒波が襲ってきた。吹雪の中、ボクたちは洞窟に避難した。食料は底をつき、寒さと飢えで体力は限界に近づいていた。

 「もう...だめだ...」

ボクがそう呟いた瞬間、不思議なことが起きた。


かすかな声が聞こえた。驚いて目を開けると、そこにはコッコちゃんがいた。涙を浮かべながら、ボクを見つめている。

 「コッコちゃん...？今の声...君なの？」 

ボクは信じられない思いで問いかけた。パルは話せないはずだ。しかし、コッコちゃんはゆっくりと頷いた。


その言葉に、ボクの目から涙があふれ出した。喉から声が出ない。心の中で葛藤が渦巻く。しかし、コッコちゃんの決意の眼差しを前に、ボクは覚悟を決めた。

震える手でコッコちゃんを抱き上げ、最後の別れを告げた。

 「ごめんね...ありがとう...」 

その夜、ボクは涙と共にコッコちゃんの肉を口にした。その味は、ボクの舌に焼き付いて離れなかった。

その後、奇跡的にボクは生還した。しかし、あの夜の出来事は鮮明に記憶に残っている。コッコちゃんの声は本当だったのか、それとも極限状態での幻聴だったのか。ボクにはわからない。

ただ一つ確かなことは、コッコちゃんとの絆は永遠に消えないということだ。今でも夜空を見上げると、星の中にコッコちゃんの姿を見つける気がする。

 「コッコちゃん...いつかまた会えるかな」 

ボクは小さく呟いた。風がそっと頬を撫で、どこかでという鳴き声が聞こえた気がした。