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92.4 hrs on record (88.0 hrs at review time)
Slay the Spireを筆頭として言えるデッキビルダー型のローグライクの今作
最近ではありふれている、と言えるほど同ジャンルのものが多いのでそんな中でのこの作品の魅力はなんなのかを語っていきましょう

独特な世界観、意外にも濃厚だったナラティブ要素
アヴァロン島伝説を下地にした独特なダークファンタジー
この作品Tainted Grail(汚された聖杯)の名前からも聖杯伝説を連想させるし
アヴァロン島と言えばアーサー王の眠る地として知る人は多いんではないでしょうか
ただゲーム中にアーサー王やマーリンの名前こそ断片的に出てくるものの実際に彼らが登場する事はなく
あくまで関連している、ぐらいの触れ方なので特別アヴァロン島に詳しくなくてもゲーム内の世界観を楽しむのには問題なし

ゲーム内ではWyrdnessという、訳が難しいが簡単に言えば異界の霧もしくは異界そのもの
光の届かない森や底の見えない湖など、何か自然の異様さの表れような現象が広がった世界が舞台になっている
この異界の霧に囚われ狂気に陥った人間やモンスターに変貌してしまった動物、果ては樹木や古の神に悪魔など
バラエティーにとんでユニークな住人との豊富なイベントはこのゲームの大きな魅力の一つと言える
逆に言えば普通に遊んでいてもテキスト量は多いので、カジュアルにローグライクの部分だけを遊びたい人には向いていないかもしれない
(日本語訳が無いので、英語が苦手な人にもお勧めし難いのが残念...)

世界観と親和性の高いOST
音楽は個人的にこのゲームでなかなか大きいパートと言えるかも、特に数年前から密かに流行り始めたヴァイキング系ミュージックの大御所Danheimの楽曲も使われていて重厚でダークな中世世界への没入感に一役買っている
公式でサントラがアップされているので気になったら聞いてみてほしいhttps://youtu.be/_QGSf01SjZk

ゲーム進行
基本的な進行はマップに配置されたモンスターに触れる事でエンカウンターする探索方式で
このマップを徘徊する際にWyrdnessの霧を払う為に使うキャンドルが所謂タイマツ式のリソースとなる
キャンドルが付きて暗闇になってしまっても自由に動けるが戦闘中に配られるWyrdenessカードから強いデバフを受けてしまい、逆に照明が足りていればバフを受ける、という程良い制限仕様

キャラクタークラスや戦闘など
プレイヤーが選べるクラスは全3(戦士、弓兵、召喚士)の中から更に3つのサブクラスを選ぶので全9種類になる
クラスが違えば当然として各サブクラスもなかなか作り込みを感じるユニークな出来になっているので、色々とクラスを変えて試すのが面白い
戦闘はコンボ要素が大きいが、カード取得以外にも選択制のスキルや消費アイテムなど強化要素が多いので、運要素にふりまわされ過ぎない程度にビルドが組みやすい
そして一度ハマる形を見つけると途端に爽快感が増してきて、なんだったらボスでも1ターンキルが十分狙えてしまう
やや大味と言えなくもないですが、デッキビルダーは狙ったビルドが機能してぶん回してる時の気持ち良さがキモだと思うので、いい塩梅の調整だと思います

ちょっと不満点も
これはデッキビルダー系全般に言えるんだけど、冗長なアンロック要素
サブクエストなどのイベント進行に合わせてアンロックされる要素は豊富だけど
一周で完了する事は殆んどなく、何週もしながら徐々にクエストを進めていく形を取る事が多く
アップグレードに必要なリソース数も少なくないので、プレイ時間が多くなりがちに

2021年産で一番好きだった作品
制作元のAwaken Realms Digitalはボードゲームをメインとするスタジオなのもあってか、やたらとバタ臭いグラフィックや(好きですけどね)システム的に洗礼されていない箇所もあったりするんですけど
丁寧な世界観の作りやナラティブの語りなど、生真面目なゲーム愛を感じてしまい、久々にお気に入りの一品と言えるような満足感のあるゲームになりました
Posted 30 December, 2021. Last edited 30 December, 2021.
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15.6 hrs on record (8.0 hrs at review time)
FTL: Faster Than Lightを複数の艦隊操作可能なRTSにしたような作品。
つまりRTS+ローグライクというなんだか面白そうな組合せにはなる、なるのだが・・



[ストーリー]
人類を宇宙に導いたエイリンのアーティファクト「アーク」を守る種族アカリ、そのアカリの仇敵であるアルサニが惑星すら破壊する兵器「Erebus Platform」を使用し侵攻に乗りだした為に、それを阻止するべくアカリ艦隊を率いてミッションに付くのがプレイヤーである。


[ゲームシステム]
マップを巡るシステムはFTLとほぼ同じで、言ってしまえばパクりと言えるほど類似しているのでFTL経験者にはわかりやすい、1つのマップ移動に付き燃料が必要な点や、ショップやクエストなどがマップに点在している事などもまんまFTLである。
要するにやりたかった事はFTLの艦隊RTS版という事に尽きるし、そのアイディア自体はなかなか面白そうにも思えるのだが、残念な事に肝心の戦闘パートやローグライクによるランダムルートにイベントなど全ての点で中途半端な出来になっている。追って説明していこう。


[戦闘パート]
まず操作が非直感的でショートカットでスムーズに艦隊操作とはいかなかった。これの慣れ不慣れは人にもよるのだろうがキーバインドが固定という事、加えて言うと各種オプションもかなり簡易的なものになっている、だからと言って特別困るわけでもないのだがやや不親切な設計が目に付く。

RTSという事でクリック操作でシップを操り戦うベーシックなものになっていて、それ自体は可もなく不可もない無難なものなのだが、視界を制限しているためにマップ全体での敵総数がわからない、更にはある地点に行くと後方から敵がポップしてくるなどの力技で仕掛けてくる事もあるために戦闘が場当たり的になりマップを攻略している感覚に乏しい。

各シップの特性やスキルのクールダウンを考慮した戦闘システムは簡易ながらもそれなり楽しいのだが、上記の理由でマップ毎の戦闘状況にパリエーションが生まれ難く結局のところモグラ叩き式に目の前の敵をルーチンで叩き潰す作業になってしまい全体の状況を判断して最適手を打つというRTSの面白さも潰れてしまっているし、索敵などで取られる時間も考えるとローグライクの戦闘パートとしては余りにテンポが悪いのも問題に感じる。


[ローグライクパート]
ランダムルートによる兵器の取得やシップの購入など色々な戦闘オプションがあるにはあるのだが、まず兵器のステータスが簡易的な説明以外にないので単純なグレードアップ品は別にしてどれほど効果に違いが出るのかがさっぱりわからない、多弾頭ミサイルと単発式の高威力ミサイルどちらが有効なのかとかそういった事が使用してみても今いちわからないのはいかがなものか。
戦闘スキルにしてもそうだが、地味な効果の物は変化をほとんど感じず武器の付け替えに面白みを感じない。

スキルや兵器の効果のわかり辛さのせいで戦闘での結果予想が立ち辛く、何のおかげで勝てたのか何のせいで負けたのか因果関係がはっきりしないので、今回はこれが失敗だったので次はこうしようといった次プレイへのモチベーションが沸きづらく、繰り返しプレイするのを前提としたローグライクとしては致命的になってしまっている。

イベントシーンにしても人物同士の会話が中心で、その場の会話回しはそれなりに面白いものの状況描写に乏しくシチュエーションが浮んでこないのでテキストだけのイベントのせいもあり、どれも結局は同じような事に思えてしまう。
単に色々な会話パターンを用意するだけで多彩なイベントを演出できた思うのは完全に間違えで、色味の無いピースを数多く並べられても面白みは薄いのだ。その点、同じ手法を取っていたFTLはテキストだけでイベントに様々なシチュエーションを与えていて行動と結果の因果関係もわかりやすくローグライクのランダム性を面白味のあるイベントとしてしっかり演出していた。


[総評]
FTLを艦隊RTSでやってみたいという発想自体は嫌いじゃないし、パーツ個々としては必ずしも悪い物ではなくむしろ平均点ぐらいはあるのだと思える、まったく詰らないとも言い切れない微妙な出来で。
艦隊RTSとしてのタクティクスなのか、ローグライク要素により繰り返し遊べる多様なランダム性なのか、オリジナルストーリーによる壮大なスペースオペラなのか。どこにフォーカスを当てたかったのかも分かりづらく、はっきり言ってそのどれもが中途半端だ。

ここまで恥ずかしげもなくFTLのシステムをパクったのだから、あえて言わせてもらうが、そもそもこの開発者はFTLが何故面白いのか理解しているのだろうか?という疑問すら沸いてくる、器作って魂入れずというかガワだけはそれなりに良く出来ているために余計に腹立たしい。基本的に自分は多少出来が悪いゲームでも、やりたい事、表現したい事に情熱を感じればそちらのほうに引っ張られる方だが、そこそこの出来に作ってさっさとEAを切り上げたこのDevにはもうこのゲームへの情熱は残っていないのでは、と感じている。
合う合わないはあるし人によっては面白く思えるぐらいの出来にはなっていると思うが、今回はそういった理由でマイナス評価レビューとさせてもらう。
Posted 11 April, 2015. Last edited 11 April, 2015.
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0.9 hrs on record
自転車で転んだ男の記憶を写真をめくる形で繋いでいく、という趣旨のアートブック的な何か。

写真というのは今では非常に身近なメディアになっていて、携帯に付いたカメラ機能で誰もが日常を当たり前のように撮り集めソーシャルメディアに乗せて発信したり、ネットで何かを検索すれば多量の写真画像を拝める時代だ。その反面写真への見方は昔から曖昧で、もっと言えば雑になっており、多少の良いの悪いのではグーグルで検索した画像をサラサラとスクロールで消化していく事以上には目にも止めてもらえなかったりする。個人的な思いだが写真は映像やペイントと違ってこちらから近づいていかないと入って行き辛いメディアでもあると思う、見ようとして見ないと感じえない事もあるという事で、そういった中で感じる写真への親密さは1つの魅力でもある。

そういう意味である程度向き合う時間を担保するこの作品のアプローチはなかなか面白いものだったと思うが、まずSteamでゲームとして出した事に無理があったのと、肝心な写真とテーマがそこまで一致していなかったり、見せ方もやや中途半端な為に積極的にお勧めする事も出来ないのだが値段分の価値は充分あったと思う。

100円ほど払って音楽と写真に暫く身を委ねるのもたまには悪くない、そんな写真とのプライベートな時間を買うつもりで。
Posted 23 March, 2015. Last edited 23 March, 2015.
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8.2 hrs on record (7.8 hrs at review time)
ポイント&クリックと選択式の会話分岐によるストーリー進行がベースのADV、全5エピソード(以下EP)の最初のEP1。ストーリー物レビューの難しさというか、ネタバレにはかなり気遣って書いてあるのでその点は大丈夫だと思います。

概要
ポイントとなる主人公Maxが手入れるリワインド能力(時間の巻き戻し)、最近色々なゲームジャンルで目にするしアイディア自体は古典的なものなので特に珍しく思える事ではないのだけれど、ゲーム内で非常に上手く機能している。
会話の分岐による選択結果は全てではないがEP毎で記録され、後のEPストーリーになんらかの因果として影響してくるものと思われる。この会話による分岐や行動の結果は必ずしも正解、不正解というものではなくプレイヤーが主人公Maxにどう振舞って欲しいのかを決定していく傾向が強い、通常こういった曖昧な選択による分岐を続けると他の選択肢も見たくなる為セーブ&ロードによってプレイヤーのゲーム世界への自己投影をゆるやかに断絶していってしまうが、リワインド能力によりゲーム内の連続したアクションとして選択を繰り返す事ができプレイヤーがダイナミックにゲーム世界と関わっている事を体感できる非常に良くできたデザインになっている。

青春とノスタルジー
導入とも言えるEP1は、ティーンエイジャーがこれから何者かに成っていくという期待と不安、大人として振舞いたい欲求や焦りなどモラトリアム時期に味わう青春の痛みが強く描かれたエピソードだ。主人公のMaxは写真家を目指すちょっとシャイでオタクな女の子、学園社会ではけしてエリートとは言えないその気質から来る疎外感や夢を追う中での人間関係への戸惑いなどが丁寧に描かれている。ゲーム全体を通して伝わってくるのは、多くの人が経験するもしくはしたであろう、ある時期特有の感情たち。そういった事を思い出した時に感じるどこか居心地の悪い淡さはまさに青春へのノスタルジーと言える。リワインド能力による超常的なミステリーよりもこういった青春ものとしての要素のほうが個人的には楽しめる内容だった。

ティーンエイジャーをメインに扱ってはいるが、作品全体にはそういった時期が過ぎ去った事への懐郷を感じる演出が強く、どちらかと言えば大人になってしまった人達へ向けた作品でもあるように感じる。大人達のためのノスタルジー世界を生きる若者達という構図で見るとどこか奇妙な気もするがそれもまた面白い。

音楽とアートワーク
ハンドライティング風のアートワークはフォントから始まり、Maxが出来事を追記するノート、写真やカーソルアイコンにいたる細部まで統一感があり、ソフトでレトロなグラフィックイメージは見ていて心地が良い世界になっている。会話や写真などに散りばめられた写真知識の小ネタなどは嫌味にならない程度に収まっているし、ゲーム内では手書きで表現されている写真の数々も見ごたえがあり美しい。オタク的なトリヴィア要素やFacebookなどのソーシャルメディアの描き方にも妙なリアリティがありゲーム内のアクセントとしてなかなか面白い。

そして音楽だがメインテーマとなっている"Syd Matters - Obstacles"はこの作品のために作られたのかと思うほど世界感と合っている、すごく合っている。最早この作品の魂なんじゃないかと思えるほど強い結び付きを個人的には感じてしまう。また他歌付きのBGMもほぼ全てこの作品とは無関係に作られた曲だが、単に"良い曲"を押し込んだだけではなくしっかりとゲーム世界に融合しBGMとして機能している。アートワークと音楽の素晴らしさに触れるだけでもこのゲームをやる価値があると自分は感じる。

少し気になった部分
登場する人物像の描き方が典型的というか。嘘っぽくは無いのだがやや悪い側面が強調された味付けになっているのが気になった、例えばオタク=メガネデブみたいなもので、作り手も無自覚にそうしているわけではないのはわかるが、こういった属性からくるイメージセットをほとんどのキャラクターに当てはめてしまっているので、人によってはこのベタな人物設定はノイズになるかもしれない。
また個人的にはMaxが常に持ち歩いてるカメラとリワインド能力。その瞬間を焼き付ける写真と起きた出来事を改変してしまう能力は意味深な対比のようで面白い取り合わせに思えたが、ゲーム内での関係性がほとんど無かったのは少し残念。

英語の事
今のところ日本語バージョンが無いので触れざるえないが、英語力はそれなりに必要、特に会話中の字幕が流れるスピードが早く、ログも残らないので英語に慣れていない人には厳しい仕様と言わざるえない、これだけ優れた作品がそういった理由で人を選ばせてしまうのが非常に残念。
ただ英語自体は日常会話の範囲なので、これから英語を勉強しようと思う人には悪くないかもしれない。

ADVのクオリティをまた1つ押し上げた傑作
また1つADVゲームの在り方を更新したと思われるクオリティの高い作品。ADVによくある選択肢を選ぶだけというもの以上に、リワインド能力のおかげでプレイヤーの物語への介入にダイナミックな手応え感じさせ、比較されやすい映画との違いを明確にしている。
ここでは登場人物の青春ドラマとしての部分に多く触れているが、スティーブン・キングを思わせる超常ミステリーもさらにドライブしていくと思われるので今後が楽しみな作品。
Posted 31 January, 2015. Last edited 1 February, 2015.
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126.5 hrs on record (121.9 hrs at review time)
「I wanna be the Boshy」のクリエイターにより作られた非常に高難易度を誇る今作「Wings of Vi」

  • 人によってはこの「I wanna be ~」というシリーズには聞き覚えがあるのではないだろうか、I wanna シリーズの特徴は商業ベースのゲームではありえないほどの高難易度と豊富なネタ要素であり、特に難易度に関してはコアなアクションゲーマーを惹きつけシリーズが量産されるほどの人気を誇る。
    そんなシリーズの亜種である「I wanna be the Boshy」だが、明確なコンセプトがある、それは理不尽な即死トラップや完璧なタイミングでのジャンプといった繊細すぎる操作要求を極力減らした上でチャレンジングなアクションとして成立させるというものだ。この精神性は「Wings of Vi」と同じであり、アクションゲーム制作のスタンスとしてプレイヤーに対してとてもフェアだと言える。

    他にも様々過去の有名作からインスパイアを受けたとされており、そういったジャンルを指してこんな言葉を目にしたのだ。
    「マゾヒスティック レトロ プラットフォーマー」
    ふむ、マゾゲーという言葉がある、つまりマゾゲーマーが居るという事だ。確かにアクションゲームとは負荷を楽しむジャンルであるとも言える、負荷とは言い換えれば苦痛やストレスであり、チャレンジングな障害である。
    ここで言うSMの関係性で言うならばサドは製作者側でありサドが用意した苦痛にマゾであるプレイヤーは身悶えそれを楽しむというわけだ。しかしマゾが無意味な暴力に快感を覚えないように、そこに快感を見出すにはそれなりの文法が必要なのだ。

  • サデイィストには相手への愛が、マゾヒストには相手への信頼が必要なのである。

    そしてこの条件は、確かに今作の中に見出す事が出来る。
    一見無謀に思えるレベルデザインも繰り返し挑む事で見えてくる活路がある、それは苦痛に耐え続ける事へのご褒美といった甘さでプレイヤーを引き付ける言わばサディストの愛であり気遣いと言える、そして苦痛の先に見えてくる確かな攻略の糸口はサデイストたる製作者への信頼を生むのだ。
    ああ・・ またこんな無茶な事させてもちゃんとご褒美を用意してくれてるんでしょ?と。
    マップ構成からそれを攻略する手順を考え、一連の動作をなぞる指から思考が抜け落ちるほど馴染むに至って、やっとその難所を抜けた時、その気だるい疲労に包まれた達成感はどこか甘くエロティックでさえある。そして巧みに配置されたチェックポイントはプレイへの集中力を心地よく区切ってくれるのだ。ある意味で体感的なこの攻略手順を繰り返すがうちに、マゾが鞭打たれる自身の被虐性に酔う様に、プレイヤーも苦痛を乗り越える自身に酔い、更なる難所へと喜んで身を差し出すようになるだろう。そして倒錯的なこの難易度曲線はスタートからラストまで美しくエスカレートし続けるのだ。

  • 最近では勘違いされやすいが、Mの苦痛への欲望とは言い換えれば要求であり言ってみれば奉仕を受ける側なのである、つまりSとは相手の要求を感じ取りそれを相手に与えるという奉仕に根ざした行為への属性であって、単に暴力的な難易度をプレイヤーに押し付けるのは野蛮なだけの粗野な行為だ、それでは成立しない。SM行為には常に互いの同意に基づく相互性が必要なのだ。その点でも製作者は心得ている。3段階の難易度設定はプレイヤーの調教具合に合わせた細やかな調整がサディスティックな姿勢を崩す事なく成されており。あくまで前提としてプレイヤーへ与えられる物はアクションゲームにおける負荷でありSMにおける苦痛だが、そこには相手の要求に合わせた確かな気遣いを感じる事が出来るだろう。

  • しかしマゾ足るプレイヤーは常に貪欲である、サドの奉仕的な苦痛を貪り調教が進むにつれて身についたスキルは更なる苦痛への欲情を促がすかもしれない、知ってしまえば追求するのが人間の欲望という物だ。倒すだけで精一杯だったボスへのノーダメージ実績に始まり、即死モード、チェックポイント無しモード、高速モード、スピードランなど様々な各種オプションプレイがそういったプレイヤーには用意されている。

    多くのアクションゲームでは主人公に新たな能力を持たせる事によって踏破可能な障害を設定するが、今作では目に見えないプレイヤーの成長を常に計算した非常に職人的な調整がされており、キャラクターに授けられた便利なツールではなくプレイヤーの成長で培ったテクニックを持ってこそ障害を乗り越えていくという体験的な手応えは、アクションゲームとしての原初的な達成感と喜びを与えてくれるのだ、勿論そこにはプレイヤーのマゾ体質という資質も必要ではあるのだが。

  • 昨今アクションゲームに求めるられる事は何だろうか?ビデオゲームというビジネスの規模が肥大化した今では、あらゆるプレイヤー層を取り込む為に難易度は駄菓子のごとくソフトになり誰でも楽しくプレイ出来るのが前提だ、でも時々思わないだろうか、ゲームに徹底的に蹂躙されてみたいと。少なくとも自分はそうだ。難しいと言われるゲームをプレイしてそれが思ったほどでも無かった時に感じる欲求不満はどうだ。もっと徹底的にやって欲しいのだ、でもそこに愛が無いのは嫌なの。そんな倒錯的欲求を持った人がもしも他にもいるのならばサディスティックな愛に満ちた「WIngs of Vi」はあなたの理想的なパートナーと言えるだろう。
Posted 20 January, 2015. Last edited 20 January, 2015.
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29.3 hrs on record
「兵士にとって戦争と言えば勝利だが、我々にとっては食べ物を得る事だった」
「地獄を彼らと生き抜いたんだ、寄り添い、生き残る為ならなんでもやった」
「あの日々を忘れる事はできないだろう、戦争の中で目にしたものは君から一生離れる事はないのだから」

上記の台詞はトレーラーからの抜粋だが戦争下でのサバイバルを市民の視点で描いた「This War of Mine」のテーマと世界感を強く物語っている。プレイヤーは紛争地帯となった架空の都市Pogorenで市民グループをマネージメントし生存の為にリソースを集め、略奪者の襲撃にそなえ武装し拠点を強化していくという内容だけ見れば実にオーソドックスなサバイバルゲームだが、このゲームに興味を示した人が気づいたように本質は別にある、それは追って後述したいと思う。

一見わかり辛い戦争状態の在り方
ゲーム内ではラジオ以外からの状況説明がまったくなくそれも断片的であるゆえ、英語に慣れていない方は一口に戦争と言ってもどういった状況なのか想像しにくいと思うが、舞台のモデルとなったのは間違いなく1992年に起こったボスニア・ヘルツェゴビナ紛争におけるサラエヴォである。およそ4年に渡って武力封鎖され市民に多くの死傷者を出したサラエヴォ包囲はゲームの舞台Porogrenの状況と酷似している。気になる方は調べてみるとゲーム世界をより理解出来ると思う。

エモーショナルなサバイバル体験
リソースの消費と供給の分配はかなりきつめに設定されいるため、最初こそ無人の廃墟や他の生存者グループの周辺を安全に周る事も出来るだろうが、一度回収したリソースが復活する事はなく、それだけでは重要な食料は不足し、度重なる略奪者の襲撃により怪我を負った仲間への医薬品は底を付く。疲労困憊でベッドに横たわる仲間達を見て、このままではどうにも成らない事にあなたは気づくだろう。
「そう、やる事はわかっている」
「あの家だ、あの家なら年寄りと、若い男もいたが大した武器は持っていない」
「大丈夫だ、自分ならきっと上手くやれる・・・」
自衛の為だったナイフをカバンに入れる行為は自分にとってとても感情的なものだった、生きるために自身が略奪者になってしまう瞬間だ。略奪者となった者はその一線を越えて尚、自分の行為が精神に重くのしかかり、時にはタバコやお酒で一時的にでも何かを忘れなければ明日に向かえないのだ。もちろん他の生存者と平和的な関係を維持したトレード行為も可能だが、どのプレイヤーにも遅かれ早かれその瞬間は訪れるだろう。まったくなんという世界だろうか。こういった戦争という極限状態の中で生存するという行為を鮮烈に疑似体験出来るのがこのゲームの本質でありテーマだろう。
ただし勘違いして欲しくないのは戦争下での市民に起こりうる略奪行為などをビビットに表現している一方で、この作品は暴力を否定しているわけではない、凄惨な状況に置かれた人々の生存行為を誰も裁けないように、生存者も自信とコミュニティでの葛藤以上に罰せられる事はない。もっと言えば戦争自体への非難めいた批判性すら無いと言える。ややもするとこういったテーマは戦争や暴力行為への安易なアイロニーに満ちた物へと成りえてしまうが、この作品を貫く感情は誰にでも起こりうる悲劇への純粋な悲しみである。そういう意味で紛争状態という難しい題材を邪念なく直球で描ききったこの作品のセンスは賞賛に値する。開発チームはポーランドをベースとしており、最近のウクライナ危機も他人事ではなかっただけにテーマに込めたリアリティは圧倒的である。こういった戦争の捉え方をゲーム内に織り込む事は、日本は勿論北米のゲームクリエイターでは不可能だと断言できる。

優れた背景表現とBGM
ゲーム世界のベースは3Dで作られた人物と建物を横から眺める2Dスクロール画面となっているが、エンピツ斜線を重ねた動く空気の様な独特の背景表現は優れた光源効果と相俟って、美しくまたどこか寂しい。戦時下を生きる人間や荒廃した建物を淡く写し出しゲーム内容と良くマッチしている、特にアコースティックギターがメインとなるBGMとの親和性は高く、生存者の陰影が色濃く表現されている。ラジオでのミュージックチャンネルをBGMとする事もできるが、こちらもクラシックを中心としておりG線上のアリアが流れる室内で近隣から聞こえる銃声や爆音との重奏は余りに切なく、まるで映画の一場面を見ているような気分にさせてくれる。徹底して戦争下の表現を貫く映像と音楽の表現美は見事と言える。

ランダム生産でのリプレイ性
極めてセンセーショナルなテーマと表現のためそちらへ意識を持っていかれるがゲームとしてのシステムもよく出来ており、生存者の固有スキル、リソース収集やランダムイベントにクラフト要素など充分なバリエーションがあるため決して明るくないテーマながらもリプレイして楽しめる内容になっていると感じる。ただし外で出会う他の生存者グループやマップなどはある程度決められたセットとなっていたり、仲間になる生存者のスキルも固定となっているため純粋にランダムなゲーム性を求めるとやや物足りない印象もある。また人間同士のやりとりが中心なことと現実的なクラフト要素はリプレイ毎に大胆な違いがあるわけではなく地味と感じる、率直に言えばゲーム世界のテーマを余り意識しないのであればあえてこの作品を選ぶ必要はないだろう。

雰囲気を重視したゆえの不親切な設計とその弊害
まずチュートリアルがなくゲーム内の行動に対する説明もほとんどない、加えて文字が小さいなど文章でのシステムフォローは最悪の部類。インタラクティブなオブジェクトにはアイコン表記のみとなっていてクラフトやラジオなど直感的に操作出来るデザインは素晴らしいとも思うが、家に設置物が増えてくるとかえってアイコンだらけとなりむしろ雰囲気を壊しているのはどうなのかというマイナス面もある。

総評
多くの戦争をテーマにしたゲームはあったが紛争下での市民視点という切り口とサバイバルを組み合わせたゲーム性はユニークかつ作品テーマと見事に融合しており、「戦争体験」というゲームでは有り触れた言葉が類を見ないほど真に迫っている。ゲームプレイを通して誰もが自分の行為と結果に感情を揺さぶられるのではないだろうか。出来れば生存者のバイオグラフィーやラジオなどの英字情報も読解したうえでゲーム世界を楽しんで欲しい。
Posted 15 November, 2014. Last edited 24 November, 2014.
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34.1 hrs on record
Last Lightのレビューページだが「Metro」シリーズ2作の総評として見てもらいたい。
「Last Light」は「2033」から1年後の話しとなっていて、特に「2033」のエンディングの結果が主人公の言動に影響している部分が大きくシリーズ未経験者は「2033」からのプレイを強く勧める。またREDUXには「Last Light」でのDLCは全て含まれている。

概要
元々4A Gamesはあの「S.T.A.L.K.E.R.」を作ったGSC Game Worldの分家のような形でスタートしたデベロッパーで、実は「Metro」の製作発表自体は「S.T.A.L.K.E.R.」のリリース前だったりする。「S.T.A.L.K.E.R.」はリリース後にカルト的人気を得ており、おのずと似たようなポストアポカリプス世界を扱った後発の「Metro2033」にも注目が集まるのだが、リニアで一本道FPSという作りは「S.T.A.L.K.E.R.」ファン達の期待と大きくギャップがあり、FPSとして平均以上の出来だったにも関わらず批判的な評価をされてしまうのである、それは「S.T.A.L.K.E.R.」の存在からして逃れようがなかったのかもしれない。当事自分も似たような感想を持っていたファンの1人である。
さらに「Metro: Last Light」の勢作発表時にはCODシリーズのキラータイトルを目指すというアナンスがあり、それを聞いて「やはりそっちの方向に行くのか」と自分の中では長らくフェードアウトしてしまっていた。 しかし「S.T.A.L.K.E.R.」も今や過去の物となり記憶も薄れたこのタイミングでREDUXとして再販された今作を今一度さらの気持ちでプレイしてみようと思ったのが購入のきっかけである。

世界感
核戦争によって荒廃した地上を捨てモスクワ地下メトロに人々が逃れてから20年後、地上はミュータントで溢れ放射能の影響は今だ消えず、地下に逃れた人類も「ファシスト」や「コミュニスト」といった派閥同士での争いが絶える事はなく、常に危険と隣り合わせの危うげな地下世界が舞台となっている。冷戦後も思想的負の遺産を多く抱えてしまった東欧らしい舞台設定や、失われてしまった地上世界への切ない喪失感など、原作が小説のせいもあってか映画的というより文学的であって、北米産のFPSでは見られない非常にユニークな世界感を持っている。

ゲームプレイ
このゲームの一つの特徴としてプレイヤーに対して多くの制約的ギミックが存在する事がまず上げられる、フラッシュライトは付けたままではバッテリー切れを起こし、ガスマクスのフィルターは時間とともに劣化する。雨水や返り血は視界を塞ぎ、蜘蛛の巣やぬかるみは歩みを遅くする。普通ならばストレスでしかないこういった要素が実に絶妙な配分で散りばめられていて、むしろ緊張感を上手く与えており、ゲーム世界の演出と強く結びついている。銃器にしてもハンドクラフト的なものが多く登場するがチャージが必要だったりと、リロードアクションに手応えを感じる物が多く操作していて面白い。やや操作キーの多さに乱雑さも感じるが、家庭用機との兼ね合いから単純化する最近のFPSの中ではいかにもPCゲームらしくて好感を持てる。

戦闘パート
REDUX前と比べてグラフィック以外で大きく変わったのは戦闘パートだと思うが特にミュータントの変更が顕著で、以前はヒット確認がし辛くまた攻撃が当たっていても怯むなどの反応がほとんど無かったためゴリ押しにゴリ押しを返すような面白みの無い戦闘だったが、この辺はかなり改善されていた。
対峙する敵のうち半分以上は人間相手となっていて、余り話題に上がらないがAIの反応がなかなか優秀だと感じる。スニーク時には音がした方向へ索敵を行ったり、消音機付きの銃で狙撃された場合、警戒状態に入ってもすぐにはこちらの居場所を特定出来なかったりする。戦闘状態でも相手のカバー位置へ照準を合わせてガン待ちしているとローリングで飛び出す、狙われている事に気づくと大きく首を振って照準を散らすなど人間臭い動きが多い。惜しむらくは主人公のスニーク性能が高いためフェアな撃ち合いがほとんど起きない事だろうか、AIが特に注目されないのはこのせいだと思われる。また人間相手のステージではほぼ全てが完全スニーク可能で並のステルスゲームと同等の完成度を持っている。

グラフィックス
やはりREDUXの一番の売りはグラフィックスだが特に地上パートの出来は素晴らしく、核の冬に覆われた白亜のモスクワは肉の削げ落ちた白骨のように不気味でどこか美しい。荒廃しながらなお美しい地上、しかしミュータントに怯えガスマクス無しでは行動できず、薄暗い地下に戻ってむしろ安堵するという悲しいリアリティはグラフィックス向上のおかげでより説得力を増している。
人物の造形も世界の過酷さを思わせる険しさと力強さを感じる多様な表情が味わい深い。しかし非常によく出来た男性グラフィックスの一方で女性全般は作り慣れていないのか人形的でどこか不気味に感じる、要所要所で見られるお色気パートがこのせいでなんだかドぎつい、しかし反応してしまう男の悲しさよ。

ガスマスク
ガスマスクだ。
ガスマスクと言えばポストアポカリプスだしポストアポカリプスと言えばガスマスクだ。冗談なんかではなくガスマスクへのフェティシズムはこのゲームの一つの魅力であると思うし、実際こういった終末世界ではシンボリックなアイコンとして認知されているのは間違いないだろう。敵味方のガスマスクの造形はバリエーション豊かで、その拘りからガスマスクへの確かな愛が見てとれる。マスク装着時の呼吸音、フィルターの着脱などFPSならではの臨場感で味わえるのも良い。ガスマスク好きならそれだけで購入する価値があると言える。

総評
ストーリーテリングを中心としたFPSをやや否定的に見てきた自分だが今作の出来には充分に満足できた、単にポストアポカリプスの舞台をメトロにしたというだけではない物がこの作品にはあると思う。地下世界のシャーマンであるKhanの言うようにメトロは息をし鼓動する、そんな言葉に説得力を感じるほど地下世界のデティールは真に迫っている。「S.T.A.L.K.E.R」がゾーンを生み出したようにメトロもポストアポカリプスの世界に新たなパラダイムを生み出したのだと言えるだろう。

地上を焼き尽くし地下に追われて尚争いをやめられない人間の業。
そんな人類に対する「Last Light」最後の希望、救済とは何なのか。

気になっている方は是非その圧倒的世界を体験して欲しい。

*ストアページ1番目のトレーラー、Mogwai: Wizard Motorと合わせた映像は震えるほどかっこよく、雰囲気を掴むのにも視聴お勧め。
Posted 10 November, 2014. Last edited 23 November, 2014.
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1.2 hrs on record
パブリックテスト版(デモ)ですが、余りに出来が良かったのでレビューを書くことに。

「Serious Sam」シリーズで有名なCroteamが何をとち狂ったか哲学エッセンス+FPSパズルアドベンチャーという新作を作ったらしい。あのトリガーハッピーゲーの老舗がパズル?と最初は訝しげに思っていたが、これがやって見ると中々に素晴らしい。


プレイヤーは気が付くと海に囲まれた古城の遺跡のような島に立っている、ここが何処なのか自分が誰であるのかもわからないまま謎の声に導かれパズルを解き、探索し、謎多き世界を進んでいく。

まずパズルパートだがギミックやオブジェクトの言葉による説明はほぼ無いにも関わらずすんなりとプレイ出来た、自分はポータルをプレイしたぐらいで特別パズルゲームに慣れているわけではないが、古典的風景美と有機物の中で異質に写るハイテクなオブジェクトは視覚的にわかりやすく、またマップも見た目のわりに把握しやすい、こ慣れたレベルデザインはさすがと言える出来映えである。

ゲーム全体はミニオープンな世界でその中にパズルパートがアトラクション的に配置されており、その他の部分は探索可能で断片的な情報が手に入るアドベンチャーパートになっている。マップの情景は非常に美しく限定的な範囲ながらもそれなりに自由に動け、時にはシークレット的な要素も発見できるので探索自体もやりがいがあってとても楽しい。

謎めいた世界を形作るストーリーだが導入の部分だけでは全体像すら見えてこないのでなんとも言えないが「永遠の命」「人類の革新」「あなたは誰?」といったキーワードが印象的に映える雰囲気をしっかり持っていて、プレイヤーを導く謎の声の言葉の数々もなかなかにセンスを感じさせる。

実際見た目以上に独特な雰囲気をなしており、導入部分でしかないデモ版だが充分その世界を堪能出来ると思えるので是非試してみてほしい。
Posted 7 November, 2014. Last edited 7 November, 2014.
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193.3 hrs on record (178.4 hrs at review time)
1988年にリリースされたCRPG「WASTELAND」の正式な続編がこの「WASTELAND2」だ。

まず最初に言っておきたいのがこのゲームのメイン要素はあくまでRPGであって、ターンベースの戦闘パートは見た目こそ似た印象を抱く「X-com」や「jagged alliance 2」などと比べた場合かなりシンプルな作りである。
RPGの戦闘パートとして見れば充分な出来とも言えるが、自分などはその部分にも結構期待をしていたので多少肩透かしを食らったのは否めない、ただし全ての戦闘は平常時からシームレスに発生するので味方の配置など戦闘前のセットアップが直接的な戦闘力と同等に重要なのは他のストラテジーベースでは見られない面白い部分でもある。
デフォルトの難易度ではわりとゴリ押し出来てしまうため、緊張感のある戦闘を望む人は一つ上の設定で挑むと丁度いいかもしれない、またゲーム中はいつでも難易度変更可能だ。

さてメインとなるRPG要素だが、まず結構な量の英文を読む事になると思うのである程度英語に慣れている人でないとプレイするのがきついかもしれない、上記の通り戦闘パートだけを楽しむのにこのゲームを選ぶのはお勧めできない。
絵で魅せるゲームが多い昨今ではほとんどの状況説明と会話を文章で済ませてしまうのは時代を逆行している手法と言えるかもしれないが、だからこそのオールドスクールである。
会話を進めるにはピックアップされたワードを選んで進めていく形式だが同じ質問にしても相手が違ければ同じ返答が返ってくる事はほぼない、それは「この街ってなんて名前?」みたいな定型文で済みそうな返答にしてもそうである、そういったちょっとした違いがキャラクターへの肉付けとなっていき、またそれに対するプレイヤーのリアクションをも明確にしていく。
プレイヤーはあらゆるところで選択を迫られ、時にそれは残酷な選択であり、また夕飯に食べる物を決めるようなどうでもいい事だったりもする、そういった様々な自分のアクションがゲーム世界でしっかりリアクトしてくれるのがWasteLand2の大きな魅力だろう。

同じ問題に対しても多様なアプローチの方法が用意されていて、例えば開かない扉はピッキングスキルで開ける、無理なら蹴破る、それも無理ならダイナマイトで吹き飛ばそう、ダイナマイト持ってない? じゃあ鍵を持ってる奴を見つけ出して脅しとろう、脅しも効かない? じゃあ・・やっちゃうしかないよね。
こういった具合に大小含めてかなりの数の分技に対応しており、その結果を残しつつも物語は進行していく、中には救われた人間や救われなかった人間もいるだろう、いつか助けたあの人が、どこかで虐げたあいつが、様々な反応を生んでストーリーを紡ぎ上げて行く事になる。

自分などは分技の結果を確かめるのに夢中になってしまい、セーブ&ロードを繰り返してこのゲームを遊びつくしてやろうと躍起になっていたが、100時間を越えた辺りでどうもそれは無粋な事なんじゃないかと思い始める。
ゲーム世界の作りこまれたデティールに触れるという意味では正しいのかもしれないが、ロールプレイというRPGの本質を随分スポイルしてしまったように感じたのだ。

勿論ゲームの遊び方なんてのは人それぞれだが、これから遊ぶ人は出来ればリセットなどは控えて、自分の選択と起きた結果を受け入れて楽しんでみてほしい、それが自分の物語となるのがRPGの醍醐味であり原点だと思うからだ、WASTELAND2はきっとそれに答えてくれる。

世界感はFalloutとほとんど同じと言っていいがFalloutのオールディーズアメリカに見られるような陽気さはなく、よりシリアスで荒廃したポストアポカリプスの世界に困窮した人々が多く描かれている。
また環境音に溶け込みそうなBGMは地味なものの世界感に良くマッチしていて非常にクオリティが高い、コンポーザーのMark Morgan氏はFallout1.2の音楽も手がけていた、まさにファンのためのキャスティングと言えるだろう。


最後にこのゲームの開発者に少し触れたい。
初代からまさに四半世紀が過ぎた今、WASTELANDの開発者がこの続編勢作の発足人だと言うのだからなんだかすごい。
ゲーム開始時に大きく名前が写るBrian Fargo氏がそれである。
Steam上にある3番目のゲームトレーラーを見ると、Fargo氏がパブリッシャーにWASTELAND2のプレゼンをしに行き、むげもなく断られてしまうというコメディタッチのショートドラマがあるのだが、後半にこんなやりとりがある。

「それって10億ドルのフランチャイズになる?」
「たぶん成らないよ・・」
「じゃあ無理だね」
「ファンが望んでるんだよ!」
「うちはパブリッシャーだからね」

勿論ジョーク的な内容だが、思うに今までこれに近いやりとりをパブリッシャーと繰り返してきたのではないだろうか、彼はFallout1.2の開発にも関わっていたがWASTELANDの続編を作りたいという思いはずっとあったのだろう、こういった事のフラストレーションからなのかKickstarterのWASTELAND2のページには他にも彼がパブリッシャーとトンチンカンな問答をする三文ドラマがいくつか見られる。
ともかく結果彼はKickstarterでチャンスをものにする、最初に提示した金額を上回る資金を手に入れ、26年の歳月を経て、自身が手がけた名作の続編を自身の手でまた世に送り出せたのだ、人に歴史と想いありだ。

はっきり言ってWASTELAND2はゲームバランスや細かい点に言及すれば完璧とはとても言えない、それでも自分が100時間を越えてまでプレイしたRPGはここ最近ではなかった、このゲームに込められた情熱に当てられたと言っていいかもしれない。
プレイするにあたって色々と乗り越えなければならないハードルもあるだろうが、それでも間違いなくお勧めの作品。
Posted 16 October, 2014. Last edited 23 November, 2014.
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16.4 hrs on record (15.1 hrs at review time)
最近増えてきたローグライクFPS。

ランダムで生産されるマップを巡りポータルを守るボスを倒して進めいくという、ローグライクとしてはかなりオーソドックスなスタイルである。

キャラクターの強化はレベルアップ時にランダムピックされるステータスブーストと武器やアミュレットの入手がメインとなっていって、プレイを繰り返す事でアンロックされるキャラクターやアイテムなどは豊富に有るが、スタート時から有利になる要素は選ぶキャラクターの能力差ぐらいしかなく、キャラクターの能力差も一長一短で単純に強いキャラクターなどは居ないため、クリアを目差す上で最も重要なのはプレイヤーの知識とスキルになっている。

階層を進む毎に武器を一つ入手する事ができ、大分して4種類。
ワンド (初期装備のピストルのような存在でマナ上限はあるが自動で回復する)
スペル (拡散型が多いショットガン系)
スタッフ (速射可能なマシンガン系)
アルケミー (範囲攻撃形のグレネード系)
名前と見た目こそオリジナルな物にはなっているがFPSでは定番の種類が揃っている、またカテゴリーの中でも数種類の武器があり、癖のある物も多くどの種類を入手出来るかで立ち回りが変わってくる。

FPSとしては新旧のミックスといった具合でワラワラと沸いてくる敵の攻撃をかいくぐりながら戦う様はいかにもオールドスクールらしいが、敵との距離調整はスプリントがメインである。
ダンジョン内を行ったり来たりするための仕様なのだろが個人的にはバニーホップでのジャンプアクションが無いのは少し残念だ。

マップの構成として、基本的な部屋はアリーナ形式でモンスターと戦う戦闘部屋だが、隠し部屋 トラップ部屋 宝部屋なども有りローグライクなアクセントもしっかりと出来ている。
モンスターは種類こそそう多くないものの見た目や能力にメリハリがあって、組み合わせや地形によっては非常にいやらしい難易度に化ける事もありなかなか手ごわい、やり応えを求めるプレイヤーは満足のいく内容だろうし、スタート時にEasy Normal Hardも選択可能である。

不満な点としてはエフェクトや敵撃破時のアクションが控えめで、シューターとしての爽快感が薄く感じる事だろうか。
またアンロック出来るキャラクターやアイテムが豊富なのだが、個人的にはローグライクでアンロック要素が多すぎるのは「全てがアンロックされてからが本番」と言われているようで冗長に思える。

グラフィックやプレイ感は非常にクオリティが高く、早期アクセスながらすでに完成の域と言っていい出来映えでローグライクとFPSが好きな人ならばまず損はしないと言える内容だろう、今年中の正式リリースを予定されていて最近ではかなりの数のアップデートも繰り返されているため完成秒読みの段階だと思える。
正式リリース時に価格が上がる予定なので気になっている人は購入を検討していいと思う。

正式リリース後の評価
リリース後もマメにアップデートされ続けており、コンテンツは充分な量となってきた。以前は高い完成度を感じながらもどこかフラットなプレイ感は楽しさのハイポイントを感じづらかったのだが、マップのバリエーションやモンスターの種類も充実した今は確実にお勧めできる良作へと仕上がったように感じる。
Posted 29 September, 2014. Last edited 24 November, 2014.
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